はじめに──「出口」を考えるのは、加入した後でいい、は大間違いだった
iDeCoを始めるとき、多くの人は「節税になる」「老後の備えになる」という入口のメリットだけを見て加入します。私もそうでした。
55歳で加入し、「よし、老後に向けてコツコツ積み立てよう」と意気込んだのはいいものの、いざ60歳の定年退職が見えてきたとき、ふと気づいたのです。
「あれ、iDeCoっていつ、どうやって受け取るんだっけ?」
調べ始めると、知らなかったルールがいくつも出てきて、少し焦りました。でも結論から言えば、ちゃんと理解すれば、問題なく乗り越えられます。
今回は、私自身のケースをもとに「iDeCoの出口戦略」を丁寧に解説します。同じように50代からiDeCoを始めた方、あるいは「遅れて始めたけど大丈夫?」と不安な方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
私のプロフィール(ケーススタディ)
まず、前提となる私の状況を整理しておきます。
- iDeCo加入開始: 55歳
- 定年退職: 60歳(予定)
- 退職金: 退職所得控除の範囲内で全額非課税(それほど多くはありません)
- 60歳時点のiDeCo資産: 約140万円(見込み)
- 60歳以降の拠出: 停止予定
ごく普通のサラリーマンが、「老後の資産形成」として50代半ばからiDeCoを始めたケースです。特別な資産家でも、投資のプロでもありません。
知らなかった「10年ルール」という落とし穴
iDeCoに加入するにあたって、私が把握していなかった重要なルールがあります。
それが 「iDeCoは最低10年加入しないと、60歳で受け取れない」 というルールです。
具体的には、受け取りを開始できる年齢(通算加入者等期間によって決まる)は以下のように定められています。
| 通算加入者等期間 | 受給開始可能年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 60歳から |
| 8年以上10年未満 | 61歳から |
| 6年以上8年未満 | 62歳から |
| 4年以上6年未満 | 63歳から |
| 2年以上4年未満 | 64歳から |
| 1ヶ月以上2年未満 | 65歳から |
私の場合、55歳から加入したため、60歳時点では加入期間が5年しかありません。つまり、60歳で定年退職しても、iDeCoは受け取れないのです。
受け取れるのは、早くとも63歳以降。さらに10年の加入期間を満たすには、65歳まで待つ必要があります。
退職金と一緒に受け取れると思っていたので、これは想定外でした。ただ、制度として明確に決まっていることなので、「ではどうするか」を考えるだけです。
私の結論──65歳に一括受取(一時金)を選ぶ
考えた末、私の出口戦略はシンプルにこうなりました。
「iDeCoは65歳で一時金として受け取る」
理由は二つあります。
理由① 退職所得控除をしっかり活用できる
iDeCoを一時金で受け取る場合、「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されます。
退職所得控除の計算式は次のとおりです(勤続年数=iDeCo加入期間として計算)。
- 加入期間20年以下:40万円 × 加入年数(最低80万円)
- 加入期間20年超:800万円 + 70万円 × (加入年数 – 20年)
私のケース(55歳〜65歳の10年加入)で計算すると:
40万円 × 10年 = 400万円の控除枠
65歳時点でのiDeCo資産見込みは約140万円です。控除枠400万円に対して資産が140万円ですから、全額非課税で受け取れる可能性が高いです。
ただし、ここで一つ重要な注意点があります。
注意点:退職金との「19年ルール」
退職所得控除は、退職金とiDeCoを同じ年に受け取った場合、控除枠を合算して使うことになります(厳密には「前年以前14年以内に他の退職手当等の支払いを受けた場合」は控除が調整されます)。
私の場合、60歳で退職金を受け取り、65歳でiDeCoを受け取るため、その間隔は5年。この場合、制度上「重複期間の調整」が入り、控除枠が縮小される可能性があります。
ただし、これは複雑な計算になるため、正確な税額は税務署や社会保険労務士に確認することをおすすめします。私のケースでは、最終的に「多少税金が発生したとしても、数千円程度」という試算になっており、大きな問題にはなりません。
60歳からはスイッチング──「守りの運用」に切り替える
もう一つ重要な対策が**「スイッチング(運用先の変更)」**です。
60歳で仕事を辞めると同時に、iDeCoへの拠出(積立)は停止する予定です。ただし、65歳に受け取るまでの5年間、iDeCo口座は引き続き存在し、運用は続きます。
そこで私が行うのが、運用先を投資信託から定期預金へのスイッチングです。
なぜスイッチングが必要か?
理由はシンプルです。**「受け取り直前に相場が暴落したら困る」**からです。
現役中なら、相場が下がっても長期で回復を待てます。でも65歳に受け取ることが決まっているなら、残り5年で大きなリスクを取る必要はありません。
元本確保型の定期預金に切り替えることで、**「増やす」から「守る」**へと運用スタンスを変えるのです。これが50代・60代のiDeCo出口戦略において、見落とされがちな大切なポイントです。
スイッチングは、iDeCoの口座を持つ金融機関(証券会社や銀行)のウェブサイトから手続きできます。手数料は基本的に無料です。
まとめ──遅れてiDeCoを始めた人でも、出口は「整えられる」
私の出口戦略を整理するとこうなります。
- 60歳: 定年退職・退職金を受取(退職所得控除で非課税)
- 60歳: iDeCoへの拠出を停止・運用先を定期預金にスイッチング
- 65歳: iDeCoを一時金で受取(退職所得控除を活用、税額は最小限)
シンプルですが、知っているかどうかで大きく変わる内容です。
「55歳からのiDeCo加入は遅すぎた」と思っていましたが、出口を正しく設計すれば、税負担をほぼゼロに抑えて受け取ることができます。
遅れてiDeCoを始めた方も、焦る必要はありません。大切なのは、受け取り方の設計を、早めに考えておくこと。それだけです。
最後に──これはあくまで「私の場合」です
本記事の内容は、あくまで私個人のケーススタディと試算に基づくものです。退職金の金額、iDeCo加入期間、その他の収入状況によって、最適な出口戦略は変わります。
特に税務面については、最寄りの税務署、あるいはFP(ファイナンシャルプランナー)や税理士への相談をおすすめします。「確定拠出年金相談ねっと」などのサービスも参考になります。
自分の老後のお金は、自分で理解して、自分で守る。そのための第一歩として、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。
※本記事は情報提供を目的としており、税務・投資に関する個別アドバイスを行うものではありません。最終的な判断はご自身の責任のもとで行っていただくようお願いします。



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